CoMMU column#009

山内達夫「Macと自分」

「僕はMacが好きだな」「私は憎んでるわよ」「オレにとっては商売道具だから好きも嫌いもないがね」「あたしゃMacかっこいいなあと思ってるよ」

これらの一人称はすべて山内達夫である。山内達夫は多重人格ではない(と思う)。したがって山内達夫は一つの人格内で自家撞着を抱えている。しかしそもそもヒトは皆んな矛盾を抱えながら生きている。矛盾を抱えたまま、パーソナルコンピュータというオモチャで遊んでいる。オモチャを好きだの嫌いだのというどこかイビツな意識を持ったまま、そのMacを商売道具にしているのは、その商売が所詮はモンキービジネスだからである。

わたしたちはすでに、デスクトップ上のHDDはニセモノだと知っているし、ゴミ箱を空っぽになんて出来ないことも知っている。いわばでっち上げられた数々の幻想は、パーソナルコンピュータの中に今でも住み着いていて、それを使う矛盾だらけの「僕」「私」「オレ」や「あたし」たち自身の属性はいとも簡単にオーバーライドされてしまうのだ。

...なあーんてことを自己言及的に書いているのも「人間のコミュニケーションにおけるすべての問題をこのパーソナルコンピュータで解決する」というAppleの宣言を信じてしまっているからである。未だにね。


(2003/11/8)

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